郷土人形ずかん

 郷土玩具とはその土地特有の材料を用いたり、その土地独特の風俗、慣習などを反映して制作されたものをいうが、その定義は明確ではない。広義的には郷土人形も郷土玩具に含まれる。ここでは人形と、それ以外の玩具、すなわち主に遊具として子どもたちに利用されたものを郷土玩具として分類した。

凧(タコ)

 中国から伝来。「タコ」、あるいは「イカ」ともいうが、これは脚をつけた姿がタコやイカに似ていることからきた日本語であろう。長崎では「ハタ」という。もともと農耕の吉凶を占う道具として伝来し、現在でも佐賀県神埼郡綾部神社のハタ揚げ神事は有名である。男の子の発節句に無病息災を祈って凧を揚げる習慣は全国的に見られるが、中でも静岡県浜松市の凧揚げ競争はよく知られている。長崎県壱岐の鬼凧、五島列島のバラモン凧なども同様の願いがこめられている。

独楽(コマ)

 高麗とも書き、中国から朝鮮半島を経由して伝わったと考えられる。もともと宮廷の儀式に用いられ、主に吉凶を占う用具として専門の役所で管理されていた。独楽というのは日本で名づけられたものと思われる。相手がいなくとも独りで楽しめる遊び、というところからきたものか。

羽子板

 古く奈良時代に女児が健やかに育つようにという願いを込めて行われる羽根突き神事に用いられた道具。のちに遊戯用としてもして普及し、江戸時代になると、歌舞伎役者などをかたどった豪華な押絵羽子板が流行した。無患子(むくろじ)の木の実に羽をつけたものを打ち合いするので、「子の患いが無い」として女児への無病息災、の願いが込められている。

ビードロ

 ビードロとはポルトガル語で、ガラスやガラス製の器具のこと。その伝来は古く室町時代にまで遡り、長崎に来たオランダ人が伝えたという。ここでいうビードロは弾力性をもったガラスの玩具のことで、吹くと「ポッペン」と音がする。博多箱崎八幡宮では江戸時代(1832年)「博多チャンポン」として売り出され、黒田藩の後押しもあって爆発的な人気を得た。当時はビードロ職人も少なく、生産も希少だったので、子どものおもちゃとしてではなく、正月の縁起物として売り出されたようだ。

押し絵

 布細工で作った貼り絵の一種。もっとも古い押し絵は正倉院宝物の中にみられる。下絵を描いてそれぞれに適した布を切って貼り付けていく。はじめは着物の残り布や着古した衣類の布切れなどを用いた簡単なものであったが、江戸時代になって大流行し、豪華な手箱や額、羽子板などに仕立てられて商品として流通することもあった。明治時代には婦女子の手芸のたしなみとして普及し、現在では単なる手芸の枠を超えて一種の装飾品としても人気がある。